乳酸菌

はじめに

近年において2020年ほど感染症が話題になった年はない。2019年末の中国武漢市での集団発生に端を発した新型コロナウイルスは、急速に全世界に拡大し、1918年に発生したスペイン風邪以来とも言えるパンデミックを引き起こしている。多くの研究者の予測どおり、冬季に入り、さらに感染が拡大し、我が国でも医療崩壊が現実のものとなってきている。人類は過去幾度となく、感染症に見舞われ、多くの犠牲者を出してきた一方、抗生物質、ワクチン等を発明し、その戦う術を身に着けてきた。しかし、新しい病原体が出現した場合、その対策は高度に文明が発達した現在においても、流行初期においては、一人ひとりが、感染症に対する正しい知識を持ち、自らが自分自身を守る術を身に着け、実践することが中心となる。本稿では、新型コロナウイルス感染症を中心に、インフルエンザ、ノロウイルス感染症等の最近の話題と予防対策について概説する。
新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ノロウイルスの特徴と最近の話題

新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、
ノロウイルスの特徴と最近の話題

(1) 新型コロナウイルス
新型コロナウイルスはコロナウイルス科に属
する新しいウイルスで、プラス一本鎖RNAをゲ
ノムとし、エンベロープを持つ1 )。ヒトのコロナ
ウイルスはこれまでSARSコロナウイルス、
MERSコロナウイルス、季節性の風邪の原因と
なる4種類のコロナウイルス( 229E、OC43、
NL63、HKU1 )の6種類が知られており、新型コ
ロナウイルスは7番目のヒトコロナウイルスで
ある1 )。国際ウイルス命名委員会はこのウイルス
をSARS coronavirus-2( SARS-CoV-2 )と、
WHOは本ウイルスによる感染症をCoronavirus
Disease 2019(COVID-19)とそれぞれ命名した。
2019年12月の出現以降、新型コロナウイルスは
各国に拡がり、2020年12月11日時点で全世界の
感染者数は7,200万人、死亡者数は160万人以上
が報告されている。
これまでの流行状況や臨床症状等をみると、
新型コロナウイルスは季節性の風邪(上気道炎)
の原因であるコロナウイルスと重篤な肺炎を起
こすSARSコロナウイルスの両方の性質を合わ
せ持つ2)。新型コロナウイルスが細胞に侵入する
際に利用しているレセプターは、呼吸器、消化器
等の各組織や臓器に広く分布しているACE2(ア
ンジオテンシン変換酵素)であり2 ),3 )、多様な臨
床症状を呈する要因の一つと考えられる。また
舌にも多く発現しており4)、会話や食事等での感
染が起こりやすい要因となっていると考えられ
る。事実、舌組織から新型コロナウイルスが検出
されている。